デッドゾーンは、スティーブン・キング原作の傑作映画

ホラー映画データベース

デッドゾーン(1983)

デッドゾーン

映画デッゾーンと原作スティーブン・キングとクローネンバーグの独自性

スティーブンキング原作の映画化「デッドゾーン」変異や科学のないクローネンバーグ作品

デイヴィット・クローエンバーグは前作「ヴィデオドローム」でやりたいことをほとんどやってしまい、新たな題材が見つからない状態にいた。そこにデッドゾーンの監督の話がくる。何年も前からクローネンバーグの元に色々な企画が持ち込まれるが、その中で初めて承諾した企画でもあります。当時映画界では、失敗に終わったスティーブン・キング原作の映画がたくさんありました。なのでこの原作の映像化は、クローネンバーグのキャリアが良い方向に向かわないと周囲の人も思っていたそうです。

しかし、デッドゾーンはスクリーンで成功を収めました。いつもの人体の変異やサイエンスが描かれていないにもかかわらずです。

コンセプト・苦悩と政治

スティルソン

特異な才能が、彼のかつての思い描いていた様な人生を破壊してしまう。今までと違う自分になり普通の生活が送れなくなった。そこから予言者として才能に見合う生活を見つけ出そうとする。この複雑な感情の変化にスポットを当てた。

また物語で権力者に対する恐怖が描かれているところに話題を呼んだ。ドナルド・トランプと作品に出てくる扇動政治家スティルソンに類似点があるという。それは、暴走族を雇って、集会で「やじを飛ばす連中」を抑え込んだシーンがトランプの選挙キャンペーンを思い出させるというのだ。人々の悪い感情を掻き立てて政治をコントロールする点だと思うが、改めてホラーとは現実に起こりうる恐怖の事であるのを再認識させられた。

クリストファー・ウォーケンの魅力

クリストファー・ウォーケン

主演のクリストファー・ウォーケンの物悲しい表情が作品の説得力を出した。人生に報いられない何かを表現できている所にこの作品のコンセプトに適した配役です。監督が持つ明確なコンセプトと表現したいことに対して正面から取り組んでいる姿が俳優にも伝わったのだと思います。

幻覚の演出

脚本は始め、普通のドラマの様に書かれていた。主人公ジョニーが体験する幻覚は、観客には実際に見えない第三者の立場から見たものだった。しかしヴィデオドロームで実証した幻覚の演出を今作でも強調し見せる事ととなった。これによりジョニーの苦悩が観客に伝わり悲劇的なラブストーリーに涙するまでに昇華された。

人生において幸せとは

主人公は人の未来を予知する能力を持っています。一般的なヒーローものならこの力を持っているならたくさんの人を助け世間のスパースターになっていたと思います。しかし好きな女性と結婚できなかった心の傷は、内省的な性格の彼だからこそ最後の強行という形になってしまった。人はなかなか物事を割り切れない。昔のことを引きずることもよくあることだと思う。ヨーロッパでは、高い評価を得て興行的に成功したが、アメリカでは良い成績を出せなかった。それは求める像に違いがあるからではないか。

あらすじ

ジョニー・スミスは大きな自動車事故に巻き込まれ、昏睡状態に陥った。神経科医ウイザックの治療の下で、ジョニーは昏睡から目覚める。意識を失ってから5年もの歳月が経っていたためであり、恋人のサラもすでにほかの男性と結婚して子供がいることを知り彼は愕然とする。

さらにジョニーは事故の影響により、人の未来を予知する能力が備わっていた。そんなある日、ジョニーの家に訪れたバナーマン保安官に、連続強姦殺人事件の解決にその能力を生かしてほしいと頼まれる。一度は断ったジョニーだが、バナーマン保安官の必死の捜査をTVで観て協力を申し出る。そして再び起こった殺人事件の現場で犯人を透視し事件を解決する。ジョニーは実家を離れ、他所の町で家庭教師をはじめる。そして教え子がアイスホッケー中に事故死するビジョンを見、教え子はアイスホッケーに参加せず死を逃れる。

新進の地元政治家グレッグ・スティルソンの演説会がジョニーの家の前の公園で行われ、そこにスティルソンの応援をするサラを見つけたジョニーは会場に迷い込む。偶然スティルソンと握手したジョニーは、スティルソンがいつの日かアメリカ合衆国大統領に選出され、有事の際に躊躇わずに核ミサイルのボタンを押すビジョンを見てしまう。未来を変えるべくスティルソンの暗殺を決意する。


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